Bone Bankの試み
橘病院 整形外科 柏木輝行・中村嘉宏・田島卓也・矢野良英
人工関節手術において、切除した骨頭や脛骨のうち、使用可能な部分を将来の再置換術のために保存できれば、同種骨や自家骨、あるいは人工骨使用の一助になる可能性があります。
当院では、従来廃棄していた骨の保存を開始したので報告します。
平成14年10月から保存を開始しました。人工股関節症例13例、人工膝関節症例10例、人工骨頭置換術症例3例です。
採取から冷凍保存までの方法は、日本整形外科学会の移植に関するガイドライン、およびボーンバンクマニュアルに従いました。
ただ、保存期間がガイドラインの示す5年を超える可能性があり、骨の処置は感染対策を充分に考慮した方法で行いました。まず、軟部組織を除去し超音波洗浄にかけます。
人工関節手術において、切除した骨頭や脛骨のうち、使用可能な部分を将来の再置換術のために保存できれば、同種骨や自家骨、あるいは人工骨使用の一助になる可能性があります。
当院では、従来廃棄していた骨の保存を開始したので報告します。
平成14年10月から保存を開始しました。人工股関節症例13例、人工膝関節症例10例、人工骨頭置換術症例3例です。
採取から冷凍保存までの方法は、日本整形外科学会の移植に関するガイドライン、およびボーンバンクマニュアルに従いました。
ただ、保存期間がガイドラインの示す5年を超える可能性があり、骨の処置は感染対策を充分に考慮した方法で行いました。まず、軟部組織を除去し超音波洗浄にかけます。
次に、骨移植用加温システム(ロベイターsd2)で処置します。
このシステムでは、骨の中心部まで確実に加温され、容器外表面温度はコンピュータで詳細に制御されています。
また、この操作は無菌操作用バイオクリーンベンチ(class 100)内で全て行うことで、空気中の浮遊細菌による汚染を回避します。
また、この操作は無菌操作用バイオクリーンベンチ(class 100)内で全て行うことで、空気中の浮遊細菌による汚染を回避します。
加温後の生理食塩水を培養に提出し、清潔3重包装を行います。
-85℃の超低温フリーザーに収納します。ガイドラインでは、-70℃またはそれより低い温度が望ましいとされています。これは、微氷結晶を生成し、氷結晶の成長を抑制すること、また酵素活性の抑制、免疫原性の抑制がなされるとされています。
-85℃の超低温フリーザーに収納します。ガイドラインでは、-70℃またはそれより低い温度が望ましいとされています。これは、微氷結晶を生成し、氷結晶の成長を抑制すること、また酵素活性の抑制、免疫原性の抑制がなされるとされています。
人工関節再置換時に使用する自家骨には限界があり、一方同種骨、HAのような人工骨は両者とも利点、欠点があります。また術者の手術手技によっても使用方法は異なります。
今回、患者さんやその家族に対し、骨移植についてのアンケート調査を行いました。整形外科領域の骨移植についての説明のあと、自分が骨移植される際に、同種骨と人工骨のどちらを選択するか、人工関節手術をなされた場合、手術時の骨保存を希望されるかどうかの2点について質問いたしました。
回答の得られた、男性155人、女性145人、計300人のうち、80%以上の方が同種骨移植より人工骨移植を希望されていました。
同種骨を選択しない理由としては、感染、他人の骨はイヤ、違和感がある、宗教的な問題、病気がうつる、気持ちが悪いなどの理由をあげられました。全体に同種骨への認識、理解度は低く、使用する場合には、時間をかけた説明が必要と考えます。
自家骨保存の希望については、システムについての説明不足もあり、よくわからない、保存状態が不安といった回答が多かったものの、男性は80%以上、女性も75%の方が希望されていました。
また、整形外科医22名に同様の質問を行いました。同種骨移植を希望された医師は18%で、82%が人工骨を希望されました。
同種骨に対しては、感染の心配、抵抗がある、抗原性の問題、未知の病気が心配などを理由に選択されませんでした。整形外科医の同種骨への意識は、今回回答された一般の方々と大差なく、移植する側もされる側も受け入れ難いという結果でした。
自家骨保存を希望する医師は86%でした。
切断肢など大きな切除標本は患者、家族に廃棄に関する同意を得るのは一般的ですが、基本的にはいかなる小骨片の廃棄に関しても同意が必要とされています。変形した軟骨などの処分は問題ないとしても、軟骨と同時に切除される正常部分の廃棄に関しての説明は必要と考えます。
使用可能な骨を廃棄することは、整形外科医にとっては心苦しいことで、またそれは、廃棄される側においても同様で、説明が必要ではないでしょうか。
人工関節手術数は、矢野経済研究所のデータでは1995年THA16,000例が2000年には25,000例、TKAは21,000例が33,000例程度に増加しています。
再置換数は、5年間でTHAが約2倍、TKAは3倍に増加しています。このデータでは、全体の4.3%ですが、カップのみの置換、また、プライマリーステムを用いた症例はカウントされていないため、おそらくその数を含めると、欧米の10%に近似してきていると予想されます。5年後、10年後にはさらに増加すると考えられます。同種骨の安全性の向上、有用な人工骨の開発がさらに必要になります。
今後は、自家骨の保存状態を経時的に調査していこうと考えています。加温による変化、保存時間、解凍による変化を観察しながら、より良い状態での移植を提供しようと考えています。
結語。施設内Bone Bankでの自家骨保存を開始しました。保存期間が長期におよんでも、より良好な状態での骨移植の提供を行える研究が必要と考えています。
今回、患者さんやその家族に対し、骨移植についてのアンケート調査を行いました。整形外科領域の骨移植についての説明のあと、自分が骨移植される際に、同種骨と人工骨のどちらを選択するか、人工関節手術をなされた場合、手術時の骨保存を希望されるかどうかの2点について質問いたしました。
回答の得られた、男性155人、女性145人、計300人のうち、80%以上の方が同種骨移植より人工骨移植を希望されていました。
同種骨を選択しない理由としては、感染、他人の骨はイヤ、違和感がある、宗教的な問題、病気がうつる、気持ちが悪いなどの理由をあげられました。全体に同種骨への認識、理解度は低く、使用する場合には、時間をかけた説明が必要と考えます。
自家骨保存の希望については、システムについての説明不足もあり、よくわからない、保存状態が不安といった回答が多かったものの、男性は80%以上、女性も75%の方が希望されていました。
また、整形外科医22名に同様の質問を行いました。同種骨移植を希望された医師は18%で、82%が人工骨を希望されました。
同種骨に対しては、感染の心配、抵抗がある、抗原性の問題、未知の病気が心配などを理由に選択されませんでした。整形外科医の同種骨への意識は、今回回答された一般の方々と大差なく、移植する側もされる側も受け入れ難いという結果でした。
自家骨保存を希望する医師は86%でした。
切断肢など大きな切除標本は患者、家族に廃棄に関する同意を得るのは一般的ですが、基本的にはいかなる小骨片の廃棄に関しても同意が必要とされています。変形した軟骨などの処分は問題ないとしても、軟骨と同時に切除される正常部分の廃棄に関しての説明は必要と考えます。
使用可能な骨を廃棄することは、整形外科医にとっては心苦しいことで、またそれは、廃棄される側においても同様で、説明が必要ではないでしょうか。
人工関節手術数は、矢野経済研究所のデータでは1995年THA16,000例が2000年には25,000例、TKAは21,000例が33,000例程度に増加しています。
再置換数は、5年間でTHAが約2倍、TKAは3倍に増加しています。このデータでは、全体の4.3%ですが、カップのみの置換、また、プライマリーステムを用いた症例はカウントされていないため、おそらくその数を含めると、欧米の10%に近似してきていると予想されます。5年後、10年後にはさらに増加すると考えられます。同種骨の安全性の向上、有用な人工骨の開発がさらに必要になります。
今後は、自家骨の保存状態を経時的に調査していこうと考えています。加温による変化、保存時間、解凍による変化を観察しながら、より良い状態での移植を提供しようと考えています。
結語。施設内Bone Bankでの自家骨保存を開始しました。保存期間が長期におよんでも、より良好な状態での骨移植の提供を行える研究が必要と考えています。
参考文献
小宮宏一郎 ほか:人工股関節置換術における同種骨移植の意義.日整会誌.76(8):1088,2002
黒木登志夫 ほか:細胞の凍結保存法―生命の半永久的保存は可能か.医学のあゆみ.69(9):406-411,19
酒井昭:凍結保存.朝倉書店
黒木登志夫 ほか:細胞の凍結保存法―生命の半永久的保存は可能か.医学のあゆみ.69(9):406-411,19
酒井昭:凍結保存.朝倉書店